前に「クリストファー・アレキサンダーの私の概論」で整理したように、アレキサンダー最初のまとまった著作のようだ。
1963年所感で、年の状況も隔世の感がある。
冒頭の章が、マスカルチャー「大量文化」。まさに、現在、先進国がこぞって発展していた時期の話である。日本なら、昭和、高度成長期。
しかし、このような問題が果たして、過去のものか?
続く、章のタイトルはこうだ。
- 侵蝕される住環境
- 失われる自然
- 溶解する都市
- 崩壊する郊外
- 小さなものを求めて
- 第一の敵・車
- 第二の敵・騒音
こう並べると、これらが、もう解決された過去の問題なのではない、現在の課題ではなかろうか。
侵蝕される住環境:住環境はもはや住まうことを目的としていない。欲望を満たし、生産拡大のための単なるツールとなってしまった。
- 失われる自然:誰も否定はしないであろう、地球的視野で見れば自然は失われ続けている。人間のすべての活動それ自体が自然なのであるといってしまえば別であるのだが。
- 溶解する都市:中世の都市から、コンクリートと鉄と自動車の都市へ、がこの時代。いまや、超高層ビルが乱立し、加えて、コンピューターによるバーチャルな世界の拡大は、生身の人間の脳長kを超えて超溶解が進んでいる。
- 崩壊する郊外:シャッター街地方都市、高齢化のすすむ郊外・・
- 小さなものを求めて:建物ももちろん、企業も超巨大化
- 第一の敵・車:経済の牽引車としての自動車、地方の足としての自動車。もはや敵でもなかろう・・が、地方都市の中心市街地の空洞化は、車社会と切り離して考えることはできない。
- 第二の敵・騒音:都市騒音は解決されてのか?2重サッシと高気密化とエアコン・クーラーによって解決された?いや、この人工機構化で、多くのエネルギーを必要とさせ、一方一応の解決は都市はまた膨らみ、地球温暖化を招く。
確かに、あの時代から多くの都市・環境問題が解決されてきた。
こう考えると、課題を解決したのではなく、人間・生物が、その環境になれたことも大きな要素ではないだろうか。人間・生物が、いかに、順応性に優れたものか、おもい知らされる。
人間は、もはや、このような状況を、飲み込み、受け入れれてる。まるで、第二の自然とばかりに。
しかし、今一度考えてみよう。現在の事件・事故に現れる社会問題の根を、精神論・制度のほかに、われわれの環境に、それを見出すとすれば、ここに挙げられた課題が、まさにその根となっているのではあるまいか。
このように考えると、解決されていない現代的課題なのだと思う。
このような課題に対し、彼らの解決方法の提案には、2つの特徴がある。
一つは、これらの問題を抱える都市・住居の「構成要素」を箇条書きで33個に、分類してしまった。
まさにコンピューター世代の問題解決方法を、提案していることだ。
実際p191「コンピューターの参加」では「このような問題を解決するには、電子計算機を使用する必要がある」(p191)「マサチューセッツ工科大学のIBM704型コンピューターは、・・、この接続を扱う問題の重要な"裂目"を数分間で見出した」(p192)とある。
私はそのその実際の計算の詳細は、わからないが、このような要素に分類すること自体が、まさにコンピューター世代的思考法だと思う。
そして、ここから、「諸問題は型(パターン)を持つ」-「まずは注目すべき重要な原理がある。すべての問題は、独自な構成の型(パターン)をもつということである」(p181)とし、パターン・ランゲージの萌芽をここに見る。
もう一つは、ヒエラルキーとプライバシー(もしくは障壁・ロック)という、構造的原理で、分析したこと。
ヒエラルキーは要素と要素のつながり方、プライバシー(もしくは障壁・ロック)は、先の要素を開放するか閉じるか。
こう表現すると、まったく電気回路みたいになってしまうのだが・・・。
公的に開かれた空間と、私的に閉じた空間、これらは都市から個人の部屋・心まで段階的につながり構成するものだとして、モデル化分析している。
ここら辺は、「クラスター批判」の中の都市像のイラストと分析、「プライバシーの解剖」のコートハウスの同様の分析を見ると、視覚的にわかりやすい。
構造化されたモデルが、まさに電気回路みたい!?・・まさにコンピューティング世代の幕開けだったのでは・・。
あらためて、この本を開きなおし、めくってみると総括になるのだが・・コンピューター社会の今から見ての話である。
はじめは、挿絵を眺めているのがせいぜいで、その挿絵がわかったような?実はわからずだけど、直感的で楽しかったような感じがする。
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