2009年12月21日月曜日

小さな家

著者 : ル・コルビュジェ

訳者 : 森田敏一


整理番号 : 75

分類 : 建築_作品 | ヒロシの分類 : - ,小さな本LittleBooks/詩と小写真集 | amazonランキング:22609

amazonで見る(右タイトルをクリック)) タイトル:小さな家

写真案内・文庫・再販:

ヒロシの書評:
数多くの著作を残したル・コルビジェであるが、意外と、この小さな本を支持する建築家が、多いのではないだろうか。
私の場合は、大学時代、夏休みに岩手県北上に帰省し、自動車教習所に通う、帰り道、牧子・平野建築研究所の「アルバイト募集」の張り紙を見て、アルバイトに飛び込んだ。
ここで、大学の教育とは、異なる、実務の勉強の第一歩を、教えていただいた。夜になると、飲み屋に誘っていただき、牧子氏と平野氏の建築談義を、拝聴した。
ま、僕も、世間知らずで、生意気だったので、こっちのつたない建築論もぶっていたように思う。
そんな、時代、牧子氏が推薦していた、本で、東京に戻り、購入したように覚えている。

母のためのレマン湖畔の小さな家である。写真と、コルビジェのコメント、コルビジェ独特のスケッチが、挿入されている。
自分も、一軒家を設計したら、こんな本に残しておきたいとも思った。
写真も、写真家の写真というよりも、コルビジェのスナップという雰囲気が漂う。
建築の内部空間の展開や建築のファサードの秀逸さを競う写真ではない。建築と周辺環境を意識させるカット。庭との関係を意識させるカット。
庭にある湖畔沿いの壁にあけた開口の横のテーブルと椅子のカット。これなどは、僕のお気に入り。白い箱をイメージさせる近代建築の巨匠の写真なのに、クリストファー・アレグザンダーのパターンランゲージの挿入写真をつい想像してしまう。
他には、屋上庭園の草だらけのカットや、排水溝の詳細写真。内部空間にしても、全貌のわかる写真は少ない。むしろ、トップライトや、開口部の部分的カット。
かっこいいデザイン・スタイルもいいが、まずはここから考えよう!って感じの、写真です。
そんな、完成写真の、原点は、これだ!って、言うように後段には、コルビジェのスケッチが載っている。

そこで、コルビジェの全8巻の作品集を見ると、第1巻の最初のほうで、見開きで、掲載されているだけである。
改めて、訳者 森田敏一氏の解説を読むと、1923年に建設され、本の発行は、30年後の1954年だそうである。
そうやって、改めて、後段のスケッチを見直すと、1945年のスケッチとあり、最後の母の顔のあるスケッチは1945年。母が91歳のスケッチだ。
ウーン、そうか。僕は、建築家には、設計の原点の作品があると思っている。数多くの、有名な大きな作品を生み出す、大建築家でも、なぜが、思考の原点とも言う、作品があるのだ。
たぶん、コルビジェにとっては、この小さな家が、彼の原点ではあるまいか。
明確なコンセプトが、そこに現れていないといえども、思考の始発がここにあったと、57歳の彼が、ひと時振り返った本ではなかろうか。


-------------------------------------------------------

仕事のホ-ムページ「建築住宅3D設計innovation|高橋建築研究所・一級建築士設計事務所| 高橋寛・建築家」ヒロシの読書履歴(約1000冊)も見てくださいね。
ホーム>建築家高橋寛プロフ>建築家読書履歴


-------------------------------------------------------     

0 件のコメント:

コメントを投稿