著者 : 家永 三郎
訳者 : -
整理番号 : 1025
分類 : 人文・思想 | ヒロシの分類 : - ,- | amazonランキング:175336
amazonで見る(右タイトルをクリック)) タイトル:日本文化史 第2版 (岩波新書 黄版 187)
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ヒロシの書評:
これもたまたまブックオフをぶらついていて購入。
家永三郎といえば、「教科書裁判」の人、って感じ。僕の世代かな、子供のころNHKのニュースでよく出ていたね。政治思想のリベラル派・反権力志向の代表ってイメージがある。
それで、この本を、手にして、へー!って思った。
学校で習う歴史って、どっちかって言うと、どんな人がいて、人の行為と行為の結果の権力に関係がどうだって、話が中心ですよね。文化については、だいたい時代ごとの章の最後にまとめてこんなのがあったよ、代表的な人と作品名を覚えなさい!って感じで、お目かみたいな感じじゃないですか。
僕は、どちらかというと、その章末の「文化欄の解説」が、結構好きだったんですね。ヘレニズム文化の解説・写真、法隆寺の写真、お城の写真、地理では大ロンドン計画とかブラジリア・キャンベラの図を見てニヤッとしていた。のっていうか、人間関係って興味なかったのかも(理系思考で、これ、やっぱりもんだいなんですが・・)。
で、この本を読んで、文化中心に歴史が語られ、歴史が「ちょいと、身近に感じられた」のです。
なるほど、1959年の著者のはしがきでは「文化のそれぞれの分野を対象とした特殊文化史というもの・・・の書物はりっぱなものがたくさん世に出ているが、日本文化全般の発達を概観した日本文化史の通史は、少なくとも戦後あまり出ていない。・・・新書の中に日本文化史の1冊が企画され、それが著者に割り当てられたのは、そういう理由によるものであった。」とある。思わず納得である。
薄く、広くが基本だあるが、やはり視点を変えてみることは面白い。
私の気ななった点を、3箇所ばかり。
まずは源氏物語。「『源氏物語』といえども、全体の組織の弱いことはたしかで(p89)・・『源氏物語』の最大の強みは、長編の構想にあるというよりは、・・・多数の人物の個性がそれぞれ的確に書き分けられていること、内面的葛藤が微細にえがき出されていることにおいて、近代小説に恥じない描写力を発揮していることにある(p90)」のだそうで、まさに日本人好み、日本文学の本質そのものだあるのだろうと納得した。
次に「理論的な著作の出現」として、鎌倉時代を論理的思考の転換点としていることである。
「理論的思弁の成果として芸術の成果に匹敵するものにとぼしい事実は、否定できまい。その点鎌倉新仏教は、中国や西洋の哲学思想に比べても遜色のない、世界人類思想史の最高の所産のうちに数えられる高い価値を持つ精神遺産である。抽象的思索に長じない、日本人の文化の中では、類例の少ない論理的業績といえるであろう。(p133)」としている。
その例として、
1.藤原俊成、藤原定家の「幽玄」の思想
2.北畠親房「神皇正統記」によろ歴史の論理化
3.伊勢外宮神官による「神道五部書」による民族宗教の論理化
4.鴨長明「方丈記」、吉田兼好「徒然草」の哲学的思索
5.朱子学の伝来-禅宗文化の一貫として、朱子学が禅僧の間からまず研究
を、指摘している。
最近私は、日本の建築文化のターニングポイントは、室町時代にあるのだと思うようになっている。遡れば、60年代丹下健三の弥生・縄文の議論、磯崎氏などが論ずる伊勢神宮・その対極としての法隆寺などと、文化的原点を遡ることも可能であろう。
しかし、書院という日本の住宅スタイルが生み出され、禅宗寺院の明らかに意図的な石庭などが生まれる。さらに、その観念的延長に、わび・さびの世界、茶室・数寄屋という建築空間が広がったとすると、そこは大きなターニングポイントであったように思える。
さらに、建築文化ターニングポイント・室町時代の背景には、うえの、鎌倉時代の「論理的思考の転換」であったとすると、非常に頷けるのである。
著者は「理論的思弁の成果として芸術の成果に匹敵するものにとぼしい」と書いているが、「理論的思弁の成果として芸術が、生まれた」とも考えられる。「幽玄」「無常」「簡素化」「論理的」思考が、その後の建築デザインを決定付けたとすると、あまりにも納得なのである。
ちなみに日本で始めての建築家らしき人は、誰か。磯崎新・伊藤ていじらは、重源と言っているように記憶しているが、まさに、東大寺南大門を建立した鎌倉時代の人である。
そんなことで、建築の流れと、文化的な流れが一致したような、プチ発見で、不学な私のプチ喜びに、ニヤッである。
三つ目は、チョイゴシップ敵ネタ。(p199)「「和服」の特色を、日本古来の服装の伝統であるように思ったら、たいへんな考えちがい」だそうである。
「生産的役割がなく、自主的活動の自由を失って、いわば男性の性欲の対象に過ぎない地位に堕ちた、武士や上級町人層の女性たちは、能率を犠牲にしても、人形的な「女らしさ」を示すにふさわしい不自然な服装に甘受せざる得なかった。」のだそうで、「肉体労働に明け暮れる農村では、・・・近代に至るまで、筒袖と短い裾の上着または股引とからなる能率的服装をやめなかった」そうで、・・
いや、まてよ・・・「男性の性欲の対象に過ぎない・・・富裕層の女性」もいるし・・、いまは逆転して「男性の性欲をもてあそぶ・・・富裕層の女性」もいるから・・・うーん、なんだか、わかねー。
以上。
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